鍼灸師の技
ひとくちに、鍼灸師と言っても先生によって、治療の仕方は様々です。
西洋医学的に筋肉や骨格を矯正される先生や、カイロプラティック、古武術整体を取り入れられている方、また、古代中国で行われていた中医学、金元四大家などの名医の研究をしながら、鍼灸術に還元される先生もおられます。
私が、行っている鍼灸の施術は、身体の反応を俯瞰した体感を、脳と身体の関係と伝統中医学とをヒントに、患者さんの回復力を引き上げて行くような方法です。
知識として得た理論だけでは、患者さんを治す事は難しいので、自分が学んだ事を臨床にぶつけて、治療効果があった経験を積み重ねていきます。
そこで大事なのは、どの方法を選ぶかではなく、自分が注目いるものと実際が、どう紐づいているのを、良く観て行く事だと思います。
皮膚のツボの状態を診ているのか、筋肉と身体全体を俯瞰しているのか、骨を矯正する事で、体内の代謝がどう変わったのか。
部分と全体の、関係性を体感と共に、十分見極めていかなければ、太極を見失ってしまいます。
最初から、治療結果を「こうだ!」と、決めてかかれば、大事な事を見失うかもしれません。
伝統中医学の《脈診》は、心拍数だけを見ているのでは、ありません。
心拍の速さ、脈管の硬さ、拍動の形状などから、その患者さんの《今》を観察しています。
《脈診》には、ある程度のマニュアルのような柱となる指標はありますが、流派によって、先生によって、その解釈が違ってきます。
それは、先生それぞれが、患者さんにどれだけ感応できるかの《余地》が残されているからだと推測します。
患者さんが、治療効果を実感し、何故《病》が現れたのかを知ってもらえるようにするのも、《鍼灸師の技》なのかもしれません。